ESPer2008行ってきた
次の日に用事があって前日に上京することになったので、何かイベントがないかとIT勉強会カレンダーで探したところESPer2008を発見しました。前日でも人数が上限に達していなかったので助かりました。
想像以上に刺激的な話が聞けて、個人的に特に面白かったのは小野さん、ゆーすけべーさん、ひげぽんさんの話でした。
ということで以下まとめ。
グリーンITのすすめ -未踏的アプローチに向けて-(加藤和彦PM 筑波大学大学院システム情報工学研究科)
- 普段、PCを置いてある部屋やひざの上のノートPCや無線アクセスポイントなどで暑い思いをしているのではないか?
- 未踏的にこの熱を減らすことはできないか?
- 京都議定書は日本に不利にできているかも
- グリーンITの3つの可能性
- 人やモノの移動の効率化(ITによる)
- 産業活動の生産性向上(ITによる)
- 機器のエネルギー効率の向上(ITそのもの)
- サーバ統合、クラウド化、SaaS化など
- RAIDはCO2の排出量が多い → MAID(メイドさんではない)
- 年間電力消費が減っても、それに対する投資がその100倍では・・・ → 費用対効果を考えた対策が必要
未踏のPMの方です。前期採択0件なので後期に予算を全力投入でき、採択件数も多くなりそうとのことですので、グリーンITで未踏に応募してみるのもよいかもしれませんね。
HDDが安価になったことで、SBMとかミニブログの情報をクローリングするタイプのサービスが増えている昨今ですが、ちょっと資源を無駄にしているよなー、とか思ってしまいます。
省電力、熱対策はサーバを運用するなら考える必要がある話ですが、仮想化のようなソフトウェアアプローチは面白いと思いました。
パッケージベンチャーの立ち上げ(小野和俊さん 株式会社アプレッソ)
- http://blog.livedoor.jp/lalha/ (ブログ)
- http://twitter.com/lalha (Twitter)
- 作ったソフトウェアとか
- 日本のIT業界はSIが多数を占め、パッケージベンダーは非常に少ない
- 売り上げ曲線のタイムライン(成功ケース)
- SI ・・・ リスクはないけどブレークしにくい
- サービス ・・・ マネタイズに時間がかかる
- パッケージ ・・・ 比較的マネタイズが容易かつブレーク可能
- 起業のHowToについては総務省の資料が秀逸
- http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080307_3.html
- 実体験を基にした生々しい情報が書いてある
- 立ち上げはこれで大体OK
- ブログ/Twitterがプログラマ同士をつなげる時代
- 履歴書のより、その人の日常を知ることができる
- 小野さんの会社でも何人か採用実績有
- パッケージベンダーのビジネスの収益構造
- ライセンス
- メンテナンス
- 通常、15%〜20%の年間メンテナンス料
- これをもらわないとおかしい
- 使い続けてくれるお客さんがどの程度出てくるかが鍵
- ちゃんとつかってくれればそのお金で新しいプロダクトを作ることができる
- パッケージベンダーのフェーズ
- ソフトウェア開発フェーズ
- ソフトウェアの完成がゴール
- 資金が穴の開いたバケツのように減っていく
- 苦しくても受託開発と言う「禁断の果実」に手を出さない
- ソフトウェアラウンチフェーズ
- ソフトウェアの販売がゴール
- 軌道に乗るのが先か、資金が尽きるのが先か
- 顧客の視点:いつつぶれるかわからない弱小ベンチャーのパッケージを採用して大丈夫か
- 製品そのものより個人の技術力を信用してもらうことが重要
- メンテナンスフェーズ
- ソフトウェアのデファクトスタンダード化・ブランドの確立がゴール
- 製品出荷後に見つかった問題への対応コストは事前に問題を検知できた時の数倍から数十倍
- 4期:新規ソフトウェア開発フェーズ
- 二本目の柱を確立する
- 集金エンジン、キャッシュカウを確立
- ソフトウェア開発フェーズ
- 永遠の中級者
受託開発を「禁断の果実」と言っていたのが興味深かったです。確かに受託は売り上げを上げるには手っ取り早い手段ですが、そこに人的資源を割いてしまうと自社製品の開発がおろそかになってしまいます。受託を受けた知り合いの会社が結局SIになってしまったり、消えていってしまったりと言う話がリアルでした。
永遠の中級者の話は、パッケージだけじゃなくてWebやそのほかのUIを持つソフトウェア全般に言えることだと思います。この辺を意識していないとどちらかに偏ったものになってしまいがちな気がします。
いつの間にか社長になっていた〜未踏と社長と開発と〜(ゆーすけべーさん 株式会社ワディット)
- http://yusukebe.com/
- http://twitter.com/yusukebe
- 修士卒業後、ニートになる予定が気づいたら社長になっていた
- 未踏で採択されたもの:音楽でつながってコミュニケーションを行うソフトウェア→どうみてもLast.fmです。本当に(ry
- Last.fmに負けて、サービスにできなかったという悔しさ→これがいい経験になった
- 株式会社ワディット:和田のITだから
- 一年ぐらい仕事がない → 開き直って「迎合するようなのはやめよう」
- 「面白いものを作って日記(ブログ)で発信していこう」
- エロギーク宣言
- 07/9/29
- erogeek is not geek
- エロを促進する技術
- エンジニアの勉強会に行くとお世話になってますといわれる
- すると仕事が振ってきた
- エロギークというブランディング
- タブーっぽいアダルト業界
- おおっぴらにする
- エロという尽きない欲求
- 積極的にこちらから出向くような営業は必要なくなった
- これをウェブプレゼンスドリブンマネッジメントと呼んでいる
- ウェブで発信している内容に沿った自分しかできない受託開発
- Subversion + IRC で鎌倉にいながらも渋谷の人たちと開発できる
- おまけ:シエスタの薦め ・・・ 朝が2度来る
- 経験がとにかく足りないので将来のために泥のようにコードを書く
ブログ/Twitterを書いて、サービスを公開して、というようなセルフブランディングは積極的に行っていきたいところ。
おおっぴらに「エロサイト作ってるよ!」と言うことで、この分野に関してものすごいブレークスルーをしていると思いました。
パフォーマンスチューニングの基礎の基礎(ひげぽんさん サイボウズラボ)
- Mosh ・・・ Shemeのインタプリタ
- Mona ・・・ OSSのOS
- こんな経験ありませんか?
- いくらチューニングしても早くない
- 森に迷い込んでしまった
- 早くするのに大幅変更いるけど、ちゃんと早くなるかわからん
- なんかわかんないけど早くなった
- 問題点:方法論がいまいち浸透していない
- やってはいけないこと
- パフォーマンスを後回しに
- ×リリース直前にチューニングすればいいや
- 最悪の場合どうしようもなくなる
- 速度を計測しない
- ここがいかにも遅そうだから
- memcachedにキャッシュしよう
- インライン展開しよう
- インラインアセンブラにしよう
- プログラマは謎の直観力で遅いところを見つけるけど、結構な確率で外れる
- ここがいかにも遅そうだから
- 小さなパフォーマンスのために良いデザイン、機能性、柔軟性を壊しては駄目
- memcached → コード量が増える、コード本来の目的がぼんやりするなど
- インライン展開 → build時間が増える、インターフェースが読みづらくなる
- パフォーマンスチューニングにはコストとリスクがある
- パフォーマンスを後回しに
- チューニングを開発プロセスに
- 開発→測定→チューニングというサイクル
- 最初 ・・・ ゴールを決める
- 開発 ・・・ パフォーマンスのことは考えず、良いデザイン良いコードに集中!高速化できそうな箇所はコメントにメモする
- 計測 ・・・ 短いサイクルで計測する → 遅くなったら一つ前の開発が悪い
- チューニング ・・・ 目標を満たしていなければ行う
- 開発→測定→チューニングというサイクル
- 測定
- 環境構築
- 初期の環境構築で効率が変わる
- 本番環境に近い形で
- 記録と参照
- 過去のデータを保持してレポジトリに入れる
- どのチューニングがいい成績を出したのかがわかりにくい
- グラフを描く
- グラフで一目瞭然
- 遅いところはどこか?の道具
- プロファイラ
- プロファイラがない場合は
- ストップウォッチ
- ログ
- プロファイラ実装
- VMでは普通のプロファイラが使えない
- プロファイラを作ろう
- 一定の間隔で実行を割り込み
- そのとき何してたかを記録
- 環境構築
- おまけ:Shibuya.lispを立ち上げ
- 10/18にteck talk
DJ Player for iPhone(星野厚さん 株式会社ニューフォレスター)
分子計算支援システムWinmostarの開発とTencubeの起業(千田範夫さん テンキューブ研究所)
- Winmostar分子計算ソフトの開発
- サルでもできるMO計算
- 量子化学計算などの小難しい計算を簡単にできるように
- 機能向上をして専門家も使うツールとして
- 得意な言語はFORTRAN
- 計算化学系のテーマは未踏では非常に少ない
- 千田 = 1000 = 10 ^ 3 = テンキューブ
- 商標登録に8ヵ月半で17万円
- アカデミックフリーのものがWebmostarは定番ソフトになってきている
- Tencube/VMを商用版として10万円ほどで
- 雑誌に取り上げられたけど広告がナニでアレだったので会社では自慢できなかった
- グリーンIT
- 分子計算で物性の予測や合成方法の提案、分析データの解析など
- 軽い、簡単、きれいの3Kで
- アカデミックフリーでデファクトスタンダードを目指す
- DelphiからFortranの外部プログラムを呼び出している
定年で会社を退社された世代の方ですが、まだまだ現役と言うのがすごいです。
計算化学のようなソフトウェアだと確かになかなか売れなそうなものですが、アカデミックで無料に提供すると言うのはいい方法ではないでしょうか。
ところどころに挟む笑いの部分が非常にうまいプレゼンだと思いました。
事典検索システムCycloneの展開(藤井敦さん 筑波大学大学院)
- 研究内容の紹介:自然言語を中心とした計算機科学と情報学
- 時点検索サイトCyclone( http://cyclone.slis.tsukuba.ac.jp )
- Webから見出し語と説明を収集し体系化・多様な検索機能
- 今回のテーマ
- Cycloneのその後
- 画像との統合、自動予約、特許への応用など
- NEDOで採択
- 背景
- 知的な想像の成果を活用して国際京省力を強化する動きがある
- 特許=知的財産権の一つ
- 特許情報に内在する知識を体系化できれば学術や産業における価値が高い → 特許情報を用語辞典として活用する検索システムを構築
- なぜ特許情報から用語辞典を作るのか?
- Webになく特許情報には存在する用語があるから
- 提案するシステムの機能
- アンケート調査による評価 → 49%が良いと回答 → 既存の検索システムと比較してなら結構良い値ではないか?
- 数字が具体的に出るところが特徴
学術機関の人らしい発表でした。
システムのところどころで使っている技術は、個人的には非常に興味のある話でした。
ライトニングトーク
Webjigを用いたWebサイト最適化の提案(木浦さん NAIST)
- 趣味で人工衛星の開発をやっている
- ニコニコオーケストラをやっている
- Webサイトを作った人は見た人がどう感じたのか知りたいが、質問しても正直な感想は聞けない → ソフトウェアで解決!
- Webjigの開発
- Webサイトに埋め込まれたJSコードがユーザの行動を分析
- どのように使われたかアニメーションで可視化
- JSで動的に変化するサイトにも対応
- 現在使ってくれる人募集中
縁があってESPerの前に昼食をご一緒しました。
面白そうなソフトなのでshuugi.inとかkouna.ruとかで使ってみたいですね。
固有表現、メタデータ抽出が切り拓くマッシュアップ応用の世界(野村さん メタデータ)
Asiajinでみるエンジニアの海外進出方法(新井さん メロートーン)
- Asiajin ・・・ 日本のIT業界を英語で紹介するブログ
- 日本→海外の流れを作ろう!
- 現状
- RSS購読者1660名
- ライター8名
- TechCrunchライターも所属
- 面白いネタやニュースリリースなどをご送付ください
- 10月14日 アジア発共同ウェブカンファレンスがあるので是非ご参加ください
秋元さんがデブサミ2008で話していた内容と大体いっしょだったと思います。
なにかサービスリリースするときは連絡したいと思いました。
FireMobileSimulatorについて(堀川さん MTI)
- http://d.hatena.ne.jp/thorikawa
- FireMobileSimulator ・・・ 携帯向けサイトテスト用のFirefoxアドオン
- 主な特徴
- 端末のHTTPヘッダを一括で設定可能
- UID・端末製造番号などの送信も可能
- 絵文字
- GPS
- OSSとして公開する予定
- 端末をたくさん持たなくていい → グリーンIT
今月の頭ぐらいにたしかホッテントリに記事が上がっていた記憶があります。
これでMobaSiFの挙動を試してみたいとか思いました。
XUIではじめる携帯コンテンツ制作(大澤さん ネイキッドテクノロジー)
- 携帯コンテンツは見た目がダサいめんどくさい
- モバイルRIAプラットフォーム「Colors」 ・・・ 従来の携帯電話で話しえなかったAjaxっぽい携帯コンテンツを
- 利用方法
- XUIライブラリのバインド
- XUI属性の記述
- TwitterクライアントやFlickrクライアントを作成
- 開発に参加してくれる人を募集中。特にiPhone開発やってみたい人
会場でのデモはかなりすごかったです。
どうやって実現しているのかを知りたいと思いました。
RCMSとmixGroup(加藤さん ディバータ)
- RCMS ・・・ Relational Contents Management System
- 関連性を扱えるCMS
- CMSとしてのほとんどの機能を実装済み
- SaaSのみで提供
- 利用サイト合計で1500万PV/月
- CMS:フォルダで管理
- RCMS:メタデータで管理
- 特徴
- データの定義に拡張性を
- 詳細同士の関係をリンクで表現
- メイン情報が大きく一つとサブ情報が周りに少なめに
- 収益モデル
- RCMS本体 湯量版 初期費用4万 月額1万
- RCMSプラットフォーム提供によるライセンスフィー
- カスタマイズモジュールの開発
- デザイン制作費
- mixiのOpenIDを利用したものを作成
- 一晩で作ったことが評価
- 今後はいろいろなAPIに対応する予定
- GoogleAppEngineなどがライバルと思っている
「海外事業化支援事業」(米国)報告(神島万喜也さん 情報処理推進機構)
- 未踏でグローバルなビジネス展開を希望する開発者に対し、米国における事業化を支援する事業を実施
- あくまで支援で渡米費用などは参加者の自腹
- 未踏をどうやって英語でどう表現する? → ネイティブの人に聞いてみた
- そこで
- The MITOH
- The Super Creator
- 海外事業化支援事業
- JETROP_BIC ・・・ 2年間無償でオフィスを借りれるインキュベーション施設
訪問した企業の中には占い感覚で唾液でDNA鑑定して結果を返すベンチャーとかいろいろあって面白そうです。
日本から突然海外に出てもネットワーク形成は確かに難しそうなので、よい試みだと思いました。
全体的な感想
未踏なので話のスタートはソフトウェアなのですが、ビジネスとしてのソフトウェアの話はなかなか聞けないので非常に面白い集まりでした。
懇親会には用事があったので参加できませんでしたが、もっと詳細な話が聞きたいプレゼンが多かったです。
あと、今回聞いてて思ったのは、画像の多いプレゼンは聞くほうはわかりやすいけどメモを取る方は大変だということでしたw