ゲームのアルゴリズム 思考ルーチンと物理シミュレーション


半年以上前に買ってあったのですが、放置していました本です。
300P以上ありますが、ソースコードの部分を除くとそれほど時間をかけずに読めました。
専門用語はほとんど使っておらず、ソースコードは載っているけれど図や文章による解説があるので、プログラミングの知識がない人でも楽しんで読めると思います。
本書の内容は大きく、2〜7章までの思考ルーチンの話と8〜9章の物理シミュレーションの話の二つに分かれます。
個人的には、思考ルーチンの話の中で、5章のシミュレーションRPGのルーチンの話と7章の思考ルーチンの学習についての話が特に面白かったです。また、3章で数学的な見方からゲームの要素を考える話は興味深いです。


ゲームでどう使う?

人工知能の文献でゲーム木の話でよく出てくるものとして、ミニマックス法やα-β法、深さ優先探索などがありますが、それらの例で出てくるのはチェスや囲碁などの話です。
じゃあそれをどうやって実際のゲームで使うのか?という疑問に対して、いくつかのジャンルのゲームの話を通して答えてくれます。
学習や物理シミュレーションで出てくる手法や式などは、具体的にプログラムを書いたりはしてませんが、考え方や動作について説明してくれているので参考になります。
また、DirectXを使ったWindows用のゲームサンプルがソースと一緒についているので、実際にどのように動くのかの確認もできます。


重要なこと

著者は本書の中でいろいろな手法を取り上げていますが、必ずしも複雑な手法がよいとは限らないと述べています。
思考ルーチンはプレイヤーを楽しませるために入れるものなので、強さよりも人間らしさをいかにそれっぽく見せるかが重要だからです。
また、枯れた技術の有効性についても述べています。
開発者としても、最新の難しい手法を取り入れるよりも、単純な方法から入ったほうが挙動も安定させやすいし、実装にかかる手間もかからないので、手軽にゲームAIを楽しむことができます。